○指紋の再生と消滅
人が生きているうちは、細胞が常に新陳代謝しているため傷ついた表皮は修復され、新鮮な表皮が肉体を保護しています。
では、指紋に傷が付いた場合、紋様はどうなるのでしょうか?
傷がそのまま残ってしまうのか、それとも、傷が治って本来の紋様が再生されるのか。
これらは、指紋の構造と傷の深さによって変わってくるのです。
指紋の構造は、イラストのように真皮と表皮によって紋様が維持されています。
人が怪我をしたとき真皮が傷つかなければ、表皮が傷ついても元の指紋が再生します。
言うなれば、真皮は、隠れた指紋なのです。
もし傷が真皮まで達するものであると、永久に傷として残ります。
なぜなら真皮は修復されないからです。
しかしそういった場合、今度は、永久に傷として残った形が
後天的特徴としてその人固有の特徴となり、個人識別に用いることができます。
次に、人が死亡した場合、指紋はいつまで残っているのでしょうか?
皆さんも普段から実感されているように指(指紋)、手の平(掌紋)、足の底(足紋)は、人の行動を支える重要な働きをしていますので、体の他の組織よりも丈夫にできています。
人の肉体が土にかえるとき、一番最後に消滅するのが指紋等の表皮です。
そのため、完全な白骨にならない限り、死体から指紋を採取することが可能なのです。
警察現職の頃、ビニールシートにくるまれて液状化した腐乱死体から最後に残った、わずか一片の指紋表皮を採取したので、この表皮から指紋を再現して身元を割り出して身辺捜査した結果、殺人死体遺棄事件を解決したことがあります。
DNAは、腐敗すると組織が破壊されて消滅しますが指紋は一番最後まで残っている可能性がありますので、事実を突き止める関係者の執念が明暗を分けます。
そして、いつまでも残っている骨格の歯形、指紋、DNAは、身元確認の三要素と言えるのです。
○指紋は消せるのか
後天的に指紋を消すことはできると思いますか?
昔、とある国の犯罪者が逃亡し、指紋を消そうとしました。
その方法は手術で「皮膚を切り取る」というもの。とても痛そうな方法ですが皮膚の表面を削り取ってしまえば指紋はなくなると考えたのです。結果は一時的には指紋がなくなりましたが、時間が経ち皮膚の表面が元通りになると指紋もしっかりと再生されていたそうです。
永遠に皮膚を削り取る方法を試していれば指紋がない状態でいることもできるみたいですが、そんなことをしてまで指紋を無くすのは嫌ですよね。
もう一つ言われているものが、強い酸性やアルカリ性の薬液を使って指紋を消してしまうという方法です。消すというよりも溶かすといったほうが正しいですが、こちらの方法もやはり皮膚が元通りになれば指紋も元に戻ってしまいます。
指紋は生活する上で重要な働きをしています。生まれたときからずっと一緒の指紋を大切にしていきたいですね。