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【法改正】遺言書の書き方が変わります。

こんにちは!村井文子です。

 

清々しく晴れた日、本社前に咲く桜を撮影してみました。

白山神社、境内の一角にある古木です。

 

殊に闇夜の中、シーン・・と、ライトアップされた艶やかで美しい桜なんかを見上げていると、「櫻の樹の下には」で始まる梶井基次郎の短編小説が思いだされます。

 

桜って、散り際もまた、良いんですよね。

来年も、そのまた次の年も穏やかな気持ちで桜を眺めていたいものです。

 

先日、新元号が発表されましたが、新たな元号のもと、改正された遺言制度が始まります。

 

その内容とは、日本の超高齢化社会に備え、これから増加するであろう、相続をめぐる紛争を防止するといった観点から、自筆証書遺言の方式が緩和される等です。

 

新たな遺言制度の内容ですが、大きく変わってくるのは、以下の2つになります。

 

 

遺言書に添付する財産目録をパソコンで作成できる

 

かつて自筆証書遺言(自分で書いて自分で保管する一般的な遺言書)は、添付する財産目録も含め、全文を手書きで書く必要がありました。

しかし今回からは、相続財産の目録については、手書きでなくてもよくなります。

改正後は、自筆によらない財産目録を添付することができるようになるということです。

パソコンで目録を作成したり、通帳のコピーを添付できることにより、作業量が多いといった手間や、書き写す際に間違えるなどの問題がなくなります。

 

なお、添付する書類には“偽造防止”の観点から、すべてのページに署名してハンコを押します。

因みに、遺言書本体については、従来どおり、手書きで作成する必要がありますのでご注意ください。

 

 

 

作成した遺言書を法務局で保管する制度ができる

 

これは、2020年7月10日の施行予定ですが、法務局に「自筆証書遺言」を保管してもらえるといった制度です。

しかも、法務局が以下の業務を遂行してくれます。

 

  • 遺言書が法務省令で定める様式に合っているか、チェックをしてくれる
  • 遺言書の原本を保存するとともに、画像情報を法務局同士で共有する
  • 相続人などからの請求に応じて、遺言書の内容や、遺言書を預かっている証明書など提供する
  • 相続人のうち、誰かが遺言内容の確認などをすると、他の相続人に通知して、遺言書が存在することを知らせる

現在、「自筆証書遺言」は、保管方法が指定されていません。

 

そのため、相続の時点になってもあるはずの遺言書が出てこなかったり、偽造されたと思われる遺言書が出てきたり、または、本人が書いたと主張される、内容の異なった複数の遺言書が出てきたりして、一体どれが本物の遺言書であるのか?について相続人の間で争いになる、などの問題がありました。

言ってみれば、相続人が自分に不利になる内容の遺言書を捨てたり、書き換えてしまうことも、不可能ではなかったのです。

 

法改正後は、従来のように遺言書を自宅などで保管するよりも、ずっと確実に遺言書を残すことができますし、その後の内容訂正がない限りは、被相続人の想いを伝えることができるでしょう。

 

 

また、「自筆証書遺言」が有効になるためには、家庭裁判所で「検認」という手続きをする必要があります。

検認は、長くて数週間かかることもあり、その間、相続の手続きがストップしてしまいます。

しかし、法務局で預かった遺言書は、家庭裁判所での検認手続きが不要になります。

つまり改正後は、遺言書の内容が確認でき次第、すぐに相続の手続きを始めることができます。

 

とはいえ、実際に改正されてみないと分からないことも多いですので、今後の動向から目が離せません。

 

 

また、弊社では、筆跡鑑定として多数のご依頼を頂く案件のひとつに、遺言書の筆跡鑑定がございます。

こちらは署名だけしか資料がない場合にも、鑑定することができます。

 

 

仮に、降って湧いたように遺言書の存在を知った場合、家族間で疑念を抱くことや、無用な争いなどは誰しもが避けたいと思うのは当然ですが、私も今回の法改正の機会に、じっくりと考えてみる良い機会だと思っています。

自分の死後について考えることは、生を彩ることかもしれない、などと、花真っ盛りな桜をみて思うのでした。

 

   齋藤鑑識証明研究所
事務員 村井文子