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指紋から分かること《前半》

※写真はイメージです

1.持ち主が分かる

名前が書いてないもの、これといった特徴もないものがあります。これでは誰のものかわかりません。

しかし、持主であればそこに指紋がついているはずです。

窃盗された物から検出した指紋が、被害者の指紋に一致すればその人の物であったことになるのです。

【事例:現金窃盗事件の解決方法】

例えば,紙幣は流通しているものなので、窃盗をしたものでも持っている人が正当な所有者である推定を受けてしまいます。

だから、窃盗事件が発生して、容疑者が被害現金と同額を持っていても、本人が「自分の物だ」と言えば言い訳が成り立ってしまいます。

ところが、現金を窃盗したと証明する方法がひとつあります。それは、現金から指紋検出をして、被害者の指紋と照合するのです。そして、被害者の指紋と一致すれば、その現金は窃取したことの証明になるのです。他にも現金に限ることなく、指紋検出ができる物なら何にでも使える方法です。

 

2.手の特徴が分かる

人は、身体的特徴を多く持っており、残された指紋でもその特徴はそのまま表れます。

その具体例として以下のようなものが挙げられます。

  • 右手の指紋が多いか、左手が多いか(利き手)
  • 指が太いか、細いか
  • 指にしわがあるか、ないか
  • かすり傷などの後天的特徴はないか
  • 似ている指紋はあるか(直系血族では類似紋様が多い)
  • 指紋が荒れているか(女性、料理人、理美容業など水、油関係従事者に多い)

これらを頭において指紋を良く観察すると、その手の特徴が見えてきます。

その形態により職務質問時に手の指を見て、犯人かどうかをその場で判断できることもあります。そのため、残された指紋は何指か、どんな形態をしているのか、というのは鑑定作業上とても大切なことなのです。

また、利き手があればそれを推定することもできます。

例えば、紙に文字を書くときは、右利きの人は、左手で紙を押さえますから左側に左手が残ります。左利きの人は、これと逆になります。指紋の位置と方向、左右別によってわかるのです。

 

3.人の行動が分かる

指紋は、ご存知のように、長さと太さが異なる5本の指が並んでいます。 現場指紋もこの特徴にしたがってそのままの状態で採取され、その痕跡からいろいろな推定ができます。

【事例:指紋の分析】

例えば、会社の重要書類が社員の何者かにコピーをとられたかもしれない。

早速、重要書類から指紋を検出して、そこから触った人物を特定し、事情を聞いて見ると、 「書類をファイリングしただけで、中身をだしてコピーをとった訳ではない」という話しであった。

このような場合、部屋の中や紙から指紋を検出して、その指紋の形や付き方から、次のような事実を確認することができるのです。

  • 右手であるか、左手であるか、そのどの部分か
  • どんな姿勢のときについたのか
  • 力の入った方向はどっちか
  • 指紋がついた圧力はどのくらいか
  • 指の方向はどちらを向いているか

【分析結果の読み取り】

この事実がわかったら、ここから何を読み取るのかが大切です。 犯行の手口や人の動きを想像して、これらの現象をつき合わせていくのです。

その時に重要なのが「自然さ」です。そんな難しく考えることはなく、人間の自然な動きや物の持ち方を頭でシュミレーションしながら見ることです。 真実であるならば必ず自然とつじつまが合うものです。

その過程で無理な想像や違和感がある場合は、想像している事と真実が違っているのです。 その時は、もう一度はじめに戻って、観点を変えてシミュレーションを行うことが重要です。

 

4.言葉の信頼度が分かる

人の話は、事実を突き止める時により重要な働きをします。しかし、人は本当のことを言っているのかと思えば、そうではない事は多々あります。 まずは信じることから始まりますが、その内容によっては辻褄が合わなかったり、動きを想像すると矛盾があるなどして、事実判断の方向を左右する時はそのまま信頼できない場合があります。

【事例:供述と現場指紋の照合】

例えば、組織の上下関係が絡んだ場合は、全部が本当かどうかは、疑わしい場合があります。

そんな中で、現場周辺から採取した指紋の位置と形態が、供述内容に整合すれば、その者の供述は信頼度があると言えます。

何処にいた、何をしていたと言うのがわかれば、そこから指紋を採取し、裏付けしてから真偽を確認できるのです。 これは、冤罪防止や効率の良い捜査には、欠かせない作業なのです。

人は嘘をつく、間違いを犯す、寝返る、ということを忘れないことです。

 

5.犯人が分かる

指紋の活用方法で一番代表的なものが、犯人の割り出しです。

犯罪歴がある人は、すべて指紋が警察に保管されていますので、これをもとにして、現場から採取した指紋から犯人を探すことができます。

【事例:指紋自動識別システム】

今では、コンピュータが600万人以上もの膨大なデータベースから似ている指紋をピックアップしてくれます。 このデータベースを「指紋自動識別システム」といい、アメリカをはじめ全世界で活躍されている優れものなのです。

そして、ピックアップされた指紋を鑑定官が目で見て判断をしています。つまり、指紋自動識別システムは検索エンジンみたいなもので、最終的に照合しているのは人なのです。

【データベースに指紋がない場合】

では、現場から犯人の指紋が採取されているが、保管している指紋に一致する指紋がないときはどうするのでしょうか。

この場合は、容疑者として浮上してきた人の指紋を入手して照合するのです。

指紋を入手する方法は二つあります。

 

一つは、容疑者が触ったコップや紙などから検出した指紋と照合する方法です。これを秘匿採取と言います。この方法は、指紋を確保しやすいですが、部分的な指紋たっだり、擦れていたりして照合が困難です。

もう一つは、直接本人の承諾を得て指紋を提供してもらう方法があります。この方法は、鮮明な指紋が入手できますが、本人の承諾がないと入手ができず、もし強制的に入手することはできません。