1.令状主義
だれかを逮捕するには、基本的に裁判所が発行した逮捕状が必要です。
逮捕状の請求は、疎明資料と言って完全に犯人であるという証拠がなくても、犯人と疑うに足りる相当な理由と逮捕の必要性があれば裁判所は逮捕状を発行してくれます。
このように、令状がないと逮捕できない事を令状主義といいます。
2.なぜ逮捕するのか?
皆さんは何となく「犯人だから刑務所に入れるために捕まえる」という事は知っているのではないでしょうか。
実は、逮捕する目的はそれ以外にもいろんなものがあります。
① 強制的に取り調べをするため
② 証拠隠滅の防止
③ 逃走の防止
④ 自殺の防止
3.逮捕の種類
逮捕と言えば、警察官が犯人に手錠をかけているシーンを想像すると思いますが、実はその他にも逮捕するシュチュエーションがあります。中には、一般の人が犯人を逮捕する場面もあります。
【通常逮捕】
著しく犯罪の疑いがある人物がいる場合、捜査機関はあらかじめ裁判所から逮捕令状の発付をうけて、その人物の身柄を拘束します。
【緊急逮捕】
例えば現場から犯人が逃走し、一斉に緊急配備や駅・高速道路に捜査機関が張り込みをして、犯人を発見した場合、逮捕に緊急を要するため、事前に逮捕状の発付がなくても犯人を逮捕することができます。
但し、この場合は、逮捕した後に裁判所へ逮捕状を請求し、発付して貰わなければならず、もし、逮捕状が発付されない時は、犯人を釈放しなければなりません。
【現行犯逮捕】
犯行を犯している所、もしくは犯行を終えた直後を目撃した場合、逮捕状がなくても逮捕することができます。また、現行犯逮捕は捜査機関でなく、一般の人でも逮捕できます。
これを「常人(一般人)逮捕による現行犯逮捕」と言います。
4.逮捕されたら
それでは、逮捕された人はその後どうなってしまうのか? 今回は、その部分を詳しく書いてまいります。
なんとなく、逮捕された後は裁判をやる事は分かっている方が多いと思いますが、実は逮捕されて裁判が行われるまでには、警察・検察で決められた手続きがなされています。
○拘置所に送致されます
逮捕されたら、警察の留置場に入れられて、何日間も朝から晩まで「お前がやったんだろ!」ときつい取り調べを受けているイメージがありますが、実は留置場にいるのは逮捕されてから48時間だけです。
48時間を超えたら、警察署から検察庁に送致されて、今度は裁判所拘置所に移されます。
しかし、絶対に拘置所に移されるとは限りません。
検察官がまだ取り調べが必要と判断したら、留置場に戻されます。これを「代用刑事施設」と言います。大半の事件は、この代用刑事施設が適用されて、留置場に拘留されたまま、検察官から取り調べを受けます。
○裏付け捜査
検察庁に送致されたら、まずは10日間の検察官による取り調べが始まります。
ここで、被疑者(逮捕された人)の言っている事に嘘はないかどうか、警察が収集した証拠に間違いがないかどうか、などを実際に実演してみたりして、細かく吟味します。これを裏付け捜査と言います。
さらに取り調べ必要と判断されたら、さらに10日間の取り調べが行われ、最大で20日間拘留されます。
この取り調べの結果で逮捕された人を「有罪にするべきだ」と検察官が判断したら起訴されて裁判がスタートします。
よくドラマなどで逮捕された人が無実を訴えて、自分のアリバイを証明しようとしても、検察官に話を聞いてもらえなかった、なんて場面がありますが、実際はそうとも限らないと思います。
しかし、有罪を立証するための証拠が十分に揃っていて検察官が「この人はやっているな」と確信すると、アリバイを訴えても話を聞いてもらえないかもしれません。