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指紋と掌紋

〇手のシワと掌紋

指紋鑑定を行っている中で、「手のシワでも鑑定できますか?」と聞かれることがよくあります。

皆さんは、「手相」という言葉をご存じだと思いますが、 この「手相」は、手の平にあるシワのことで、生命線、運命線や結婚線などと言った呼ばれかたをしています。

また、太いシワの他にも、手の平には、細いシワが無数にあり、指先にも細かなシワがある人がいます。

これらのシワが、指紋鑑定に使えるのか?というのが、冒頭でご紹介した問いですが、私の答えは、ずばり、「シワのみでは個人を特定することはできない。ただし、鑑定に利用することはできる」です。

 

実際に、シワを活用するのはどのような場合か?という疑問があると思います。

それは手の平、いわゆる、「掌紋」を識別する場合です。

 

「掌紋」も指紋と同じように、ひとりひとり異なる紋様であり、左右の手の平でも同じものはないため、個人を特定できる価値のあるものです。

掌紋は、まず最初に同じようなシワを探して、このシワ同士で照合します。

 

手の平は範囲が広いので、目立つシワで最初に照合するのが一番の近道なのです。

同じようなシワがあった場合に、その付近に手掛かりとなる目立つ特徴点を探して、詳細に照合します。

このように、指掌紋の照合には、現れている手掛かりならば、シワでも何でも使いながら、個人の識別をしています。

 

○指紋の特徴と鑑定

弊社のホームページでも紹介していますが、指紋は「終生不変」で「万人不同」です。

また、人は生まれてから成長と共に変化していきますが、指紋は一生変わりません。

そして、同じ指紋の人は誰一人としていません。一卵性双生児でさえ指紋は違うそうです。

 

さらに、指1本1本もすべて指紋は違います。

 

指紋鑑定は「終生不変」と「万人不同」の特性があるからこそ、個人を特定する際に重要な役割を果たします。

 

○指紋の再生と消滅

人が生きているうちは、細胞が常に新陳代謝しているため傷ついた表皮は修復され、新鮮な表皮が肉体を保護しています。

 

では、指紋に傷が付いた場合、紋様はどうなるのでしょうか?

傷がそのまま残ってしまうのか、それとも、傷が治って本来の紋様が再生されるのか。

 

これらは、指紋の構造と傷の深さによって変わってくるのです。

指紋の構造は、イラストのように真皮と表皮によって紋様が維持されています。

 

人が怪我をしたとき、真皮が傷つかなければ、表皮が傷ついても元の指紋が再生します。

言うなれば、真皮は、隠れた指紋なのです。

 

もし傷が真皮まで達するものであると、永久に傷として残ります。なぜなら真皮は修復されないからです。

 

しかしそういった場合、今度は、永久に傷として残った形が後天的特徴としてその人固有の特徴となり、個人識別に用いることができます。

 

次に、人が死亡した場合、指紋はいつまで残っているのでしょうか?

皆さんも普段から実感されているように指(指紋)、手の平(掌紋)、足の底(足紋)は、人の行動を支える重要な働きをしていますので、体の他の組織よりも丈夫にできています。

 

人の肉体が土にかえるとき、一番最後に消滅するのが指紋等の表皮です。

そのため、完全な白骨にならない限り、死体から指紋を採取することが可能なのです。

 

警察現職の頃、ビニールシートにくるまれて液状化した腐乱死体から最後に残った、わずか一片の指紋表皮を採取したのでこの表皮から、指紋を再現して身元を割り出して身辺捜査した結果、殺人死体遺棄事件を解決したことがあります。

DNAは、腐敗すると組織が破壊されて消滅しますが指紋は一番最後まで残っている可能性がありますので、事実を突き止める関係者の執念が明暗を分けます。

そして、いつまでも残っている骨格の歯形、指紋、DNAは、身元確認の三要素と言えるのです。