鑑定の基本は、大所高所から意識して物事の視点を見つけることが肝心だと信じている。
そのためには、深山幽谷にも分け入って捨て目、捨て耳のごとく自然観察から眼力を養っている。
今、栃木県八方ヶ原のスッカン沢雄飛(ゆうひ)の滝の氷瀑が素晴らしいとのことから厳冬期の2月3日、自然の摂理を目の当たりにした。
さて、今注目されているのが“今市事件”である。
“今市事件”とは、2005年12月
日光市(旧今市市)大沢小1年だった吉田有希ちゃん(当時7歳)が誘拐され、
茨城県常陸大宮市の山林にてナイフでもって10箇所刺され殺害された事件である。
その8年2ヶ月後、別件で逮捕された勝又被告が殺人罪で起訴され、
一審、二審とも無期懲役となり、現在、最高裁に上告して争っている。
事件発生当時、いやな事件が発生したな、と思った。
というのは、殺された吉田有希ちゃんが通っていた大沢小学校は私の母校である。
私も今市市大沢町の生まれで小学校、中学校とも大沢の学舎で育ったからである。
このような事件で全国の耳目を集めたくなかったというのが正直な感じであった。
この事件が報道されると、テレビ局は同じ栃木県の鑑定人だからよく知っているだろうということで問い合わせがあり、
現場へ同行して捜査や鑑識の観点から解説してもらいたい旨の依頼があった。
だが、これらはすべて辞退した。
鑑定人の役割は、“モノ言わぬモノにモノを言わせる”のが仕事であって、
ときおり見かける刑事警察ОBの捜査の裏側的な解説はなじまないからである。
かつて再審無罪となった“足利事件(栃木県足利市)”があったように、
この“今市事件”もまた冤罪ではないのか、と危惧するところであり、
地元で同級生との集まりがあると、
「本当の犯人かどうか、どうなんだろう。」との声が増えてきているのが気にかかる。
齋藤鑑識証明研究所
取締役会長 齋藤 保