指紋の検出
指紋の検出というと、皆さんが始めに思い浮かべるのは、丸い綿状のものでポンポンと叩いている姿だと思います。
あれはまさしく指紋を検出している所ですが、実はそれ以外にも指紋の検出方法は何百種類とあるんです。では、なぜそんなに指紋を検出する方法が沢山あるのかというと、2つの理由があります。
まず1つ目の理由は、物件の種類に合わせているからです。指紋が付着している物件はコピー用紙、プラスチック、段ボール、ビニール、ガラス、紙幣など様々です。 これらの素材によって、それぞれに指紋が検出しやすい最適な方法があるので、その方法も様々という訳です。
2つ目の理由は、物件の色です。例えば、白い物件に対して指紋を白く出してしまっては、指紋が判別できません。だから、黒く指紋が出る薬品を使います。このように、物件の色と異なる色で指紋を検出しなければならないので、薬品が多種になるのです。
検出方法の種類
こうして、検出方法はいろんな物件から指紋が出せるように研究され、何百種類にもなったのです。その中でも、検出方法は主に以下の4つに分ける事ができます。
主な指紋検出方法
- 1.液体法
- 2.気体法
- 3.粉末法
- 4.光法
1.液体法
液体法は、物件を液体の指紋検出薬にどっぶり浸し、乾燥させて指紋を見えるようにする方法です。主に紙類などから検出するのに使われます。
【紙からの指紋検出】
2.気体法
気体法は、指紋検出薬をガス化させて、密閉空間に充満させます。そこに物件を入れて、指紋を見えるようにする方法です。主にプラスチック製品などから検出するのに使われます。
【ガスをかけて指紋を検出している様子】
3.粉末法
粉末法は、物件に粉末を付けて、ハケで余分な粉末を払い指紋に粉を付着させて見えるようにする方法です。主にガラス製品などから検出するのに使われます。
【コップからの指紋検出】
4.光法
光法は、指紋に発光薬を付着させ、そこに特殊な光を当てて、指紋を見えるようにする方法です。主にビニール製品などから検出するのに使われます。
【特殊な光を指紋に当てている様子】
指紋鑑定の方法
指紋鑑定の種類
指紋の鑑定方法は、3種類あります。その内容は以下のようなものです。
- 汗腺口鑑定
指には、汗がででくる汗腺口が無数にあります。その配置を比べて間隔が一致するかどうかを見極めます。 - 隆線縁鑑定
指紋線は機械的に一定の太さではなく、ごくわずかに太くなったり、細くなったりします。その部分を鑑定して指紋が一致するかどうかを見極めます。 - 特徴点鑑定
指紋線は1本の線が2本に分岐したり、2本が1本に合流したり、線が止まったり、始まったりします。 そのような箇所の配置を比べて指紋が一致するかどうかを見極めます。
実は、世界で実施されている鑑定方法は特徴点鑑定がほとんどです。一般にドラマでは指紋同士を重ね合わせるのが見られますが、現実にはこの方法は使われていません。
何故なら、指の表面は柔らかく、押圧力の加減によって伸縮するため、単純に重ね合わせてぴったり一致するとは限らないからです。
むしろ、ぴったり一致した時は、偽造指紋の疑いを持って鑑定する必要があります。
指紋が検出しやすいもの
物に触れると、微量の汗が付着し、それが指紋として検出されます。指紋が良くとれる物とそうでない物があります。今回は、指紋が検出しやすい上位3つを紹介します。
No.1 クリアファイル
指紋が検出しやすい物の特徴として、表面が平滑面(凹凸のない平らなもの)でなければなりません。クリアファイルは、厚手のビニールなので表面が平滑面であり、なおかつ手の汗の成分が付着しやすい物件です。
また、クリアファイルは安価で手に入りやすいため、利便性があります。しかし、指紋が付いている所を擦ってしまうと破壊されてしまうので、取り扱いに注意が必要です。
No.2 コピー用紙
紙類も指紋が検出されやすい物件です。特にコピー用紙は、光沢も凹凸もなく指紋検出に適してします。しかも、紙類は指紋が付着したら、擦っても消えないので、取り扱いが安心です。
ただし、手の汗が紙に染みこむために一定の時間、同じ所を触っていることが肝心です。
No.3 陶器・ガラス食器
食器やコップなどは、ある程度の重さがあって持つときに強く触るので、指紋が残りやすいです。しかし、和食器の様に表面がざらざらした物だと検出できる可能性は低くなってしまいます。
指紋の証拠能力
裁判では、指紋鑑定、DNA鑑定、目撃証言、防犯カメラの映像など、いろんな証拠が提出されますが、裁判所でどの程度重きをもって判断されるかは、その種類によって変わります。
その中で一番高い証拠能力があるのが、指紋鑑定とDNA鑑定です。
ちなみに、目撃証言は見た人の記憶の変化や目撃環境の悪さ(暗闇だった、サングラスをかけていた、一瞬しか見ていない、よく憶えていないなど)があるので、確定的な証拠とは判断されません。
また、防犯カメラの映像も証拠能力としては高いほうですが、確定的な証拠とはなりません。
なぜなら、カメラによっては画質が粗い上に、天井から撮影されているので、顔が判別できないケースがあるからです。
では、指紋鑑定は、なぜそこまで証拠能力が高いのでしょうか?
それは、見間違い、記憶違い、画像が粗いなどの心配がなく、確実に個人の特定ができるからです。
裁判官としても、状況証拠を積み上げた案件より、指紋鑑定がある案件のほうが判決を下しやすいのではないでしょうか?
このように、指紋鑑定は刑事裁判だけでなく、民事裁判でも証拠として高く評価されています。さらに、裁判に至らないような争いでも、たいていの人なら指紋が証拠としてあれば納得するでしょうし、そこで解決できず、仮に裁判になったとしても指紋鑑定があれば、負ける可能性は低いです。
拇印は印鑑の代用になるのか?
結論から申し上げますと、拇印が印鑑の代用になる文書とならない文書があります。
はじめに、法律の条文にて、印鑑の代用として拇印が有効であると書いているものはありません。それでは、なぜ有効な書類があるかというと、拇印が印鑑の代用となる判例が存在しているためです。この、代用が認められている事例は遺言書や違反手続文書(交通違反切符など)があります。
反対に、手形・小切手などは、印鑑に比べて拇印は合否の判断が容易ではないため、拇印では認められないという判例もあります。
つまり、拇印が印鑑の代用になるかどうかは、その書類の種類によるということになります。