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鑑定に秘められた力

※我々は真心で「真実」をお届けします

 

日頃から指紋、筆跡、痕跡の鑑定に携わっていると、非常に細かく観察しており、この痕跡からどのような事実が証明できるか?科学的根拠に基づく説得力はあるか?など考えていると、考えが凝り固まり、視野が狭くなってしまいがちです。

そんな時は、改めて原点に返って、なぜご依頼人は鑑定を行いたいのか?鑑定人として何ができるのか?など大切な信念の部分を振り返ります。

今回は、私が鑑定に携わって、感じたことを思いのままに書きたいと思います。

 

日々、弊社には悩みを抱えたご依頼人がたくさんいらっしゃいます。自分が契約した覚えのない借用書に自分の指紋が押されている方、社内の秘密事項が外部に漏れてしまった社長さん、遺言書が偽物と疑っていて相続がスムーズに行かないご夫婦など様々な悩みがあります。

そして、弊社にご依頼される時は、ご自身の中で答えをもっています。例えば、前記の例ですと、「自分は絶対に契約していない」、「遺言書は絶対に偽造されたものだ」と心に決めています。

 

鑑定には2つの答えがあります。指紋鑑定の場合は指紋が一致するかしないか、筆跡鑑定の場合は書類が本物か偽物か、ご依頼者が望んだお答えと我々の鑑定の結果が同じならば問題ないですが、これが違っていた場合は我々も心してご依頼に結果を伝えますが、まずその場でご納得される方はおりません。必ず、鑑定に関する詳細な質問を受けますし、場合によっては鑑定そのものに信用性があるかどうかを疑う方がいます。

しかし、我々も鑑定人の姿勢として、お客様に迎合して結果をあやふやにするわけにはいきません。鑑定結果のニュアンスを変えることはご依頼者を余計に混乱させる結果となってしまいますので、しっかりと、その結果に至るまでの経緯をお話して、疑問に思うことはすべてお答えします。

 

そのようにすれば、時間とともにご依頼者は納得していただけます。しかし、このように納得していただけるのは、我々が経過をご説明しただけではなく、ご依頼者が真実と向き合ってくれたからです。

人は日常生活をする上で損得勘定は必要不可欠ですので、常にその感覚を持っています。そのため、はじめは自分にとって不都合な事を拒絶してしまいますが、時間が経つと損得勘定を度外視して真実を見つめ直してくれます。それだけ「真実」には強い力があります。

 

しかし、実は「真実」に強い力があるのではなく、本当に強いのは正しくあろうとするご依頼者の心です。私は不都合な「真実」でも、それを受け入れて前に進むのが正しいことと思います。

口で言うのは簡単ですが、実際にやるのはなかなか難しいものです。私も本当にできているかどうか自信はありません。

 

それはさておき、実際に長年にわたり相続争いをして、多くの時間と労力とお金を費やしてしまい、やっと終わった頃には実際にもらえる相続分よりも使ったお金のほうが多かったなんて事例をよく聞きます。

やはり、思ったよりも相続分が少なかったとしても、それが真実ならば受け入れて早めに終わらせてしまった方が正しいと思います。

 

そして、我々鑑定人はご依頼人が前向きになって、事案を解決のお役にたてるのが何よりも幸せであり、非常にやりがいのある仕事と感じています。

 

齋藤鑑識証明研究所
齋藤 健吾