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拇印の効力について

1.拇印の効力について

指先に朱肉をつけて、指紋が残るよう押したものを「拇印」といいます。
印鑑を持ち合わせていない時に、捺印の代用として行うことが多いですが、この「拇印」には本人を証明するものとして高い効力があります。

不動産取引や売買契約を行う際、契約書には承認の証として署名や捺印を行います。しかし、印鑑の代わりに拇印を押した場合、契約書の効力はどうなるかご存じでしょうか?

裁判所の判例によると、拇印で作成した契約書は有効で、なんと実印と同じ効力があるのです。

不動産取引や売買契約を行う際には、本人の同意がなければ契約は成り立ちませんし、本人の意思に基づく証明が残されていない場合は有効と認められません。一方、拇印が押されている場合は、本人の意思に基づいて押したものと認められます。むしろ、信頼度が高まり、本人を証明するものとしての効力も強くなります。

2.拇印の押し方

日常生活ではあまり拇印を使用する機会はないものの、拇印の押し方の決まりはご存知でしょうか?
拇印には必ずこの手順で押さなければならないといった決まりはないそうで、手の指ならば10本どの指を使ってもいいのです。

ですが、ほとんどの場合が右手の親指か人差し指を使います。左利きの方の場合は左手の親指か人差し指を使うことが多いです。
また、押し方は朱肉か墨を使い、なるべく指紋がキレイに残るように押すようにします。

ぶれてしまったり、欠けてしまったりすると、後から争いになった時に指紋鑑定ができないので、その効力が認められないこともあるようなので注意が必要です。
では、どの程度なら有効か?それは、皆さんが見て指紋線がはっきりと確認できる程度であれば問題ないです。

3.指紋鑑定の確実性

なぜ、信頼度が高まるのか? それは、印鑑と比べて拇印には2つの効果があるからです。

(1)他人に持ち出される心配がない

実印を家のタンスに閉まっていたら、家族に持ち出されて知らない間に契約をされてしまったなんて事はないですか?

「自分の家族に限ってそんな事はない」と思うかもしれませんが、携帯電話の契約や新聞の契約など、比較的日常的な契約は本人の了承を取らずに実印を使ってしまう、なんて事が多いようです。

指紋ならば他人の指を勝手に持ち出すわけにはいかないので、安心ですね。やはり、実印を勝手使うのは家族と言えどもやってはいけませんね。

(2)偽造される心配が少ない

高性能な機械が安く手に入る今の時代に、実印の偽造は簡単にできてしまいます。皆様が思っているよりも実印の偽造件数は多いです。

それに比べて、指紋は偽造できない事はないですが、専門的な知識・技術・道具を必要とするので、実印の偽造に比べるとはるかにハードルが高いです。

このように、契約書に指紋を残すことで、本人が間違いなく押したものだと確実性が高くなります。押印する際は是非、拇印をおすすめします!

4.指印は印鑑の代用になるのか?

それでは次に、もう少し身近なお話を…。

皆さんは印鑑を忘れた際に、拇印で代用したことはありますか?

私は印鑑と拇印は同じ効力があり、印鑑を忘れた場合は拇印で代用できると思っていました。ところが先日、役所へ届け出をおこなったときに、印鑑を忘れてしまい、拇印で代用しようと窓口で確認したら、役所や税務署などでは、拇印は認められない事が分かりました。この時は家に印鑑を取りに戻り、再度役所へ行き届け出を提出したのですが、印鑑を押したことで本人の証明になるのかと少し不思議に思いました。

それではなぜ、役所などで拇印が通用しないのか?実は「役所に提出する届けは印鑑」と法律で決められているそうです。また警察では、刑事訴訟規則などで「指印しなければならない」という条項があるそうです。

日常生活ではあまり拇印を押すことを深く考えたことがなかったのですが、印鑑の効力は法律などで決まっているのですね。しかし、印鑑の代わりに拇印を押しても有効であると判例がありますが、簡単に代用を考えるのではなく、印鑑を忘れないことを心掛けることが大切ですよね。

5.印鑑はなくならない?

三文判など、今では100円均一でも簡単に手に入るので、本人の確認という観点からみると、拇印やサインでもいいように思えてきます。
「万人不同」の原則がある拇印や、本人が書いたサインの筆跡鑑定ができるほうが、本人を特定できるので確実ではないかと。

実際、印鑑文化は日本特有で、海外ではサインが一般的に使われています。

それでは、なぜ日本は印鑑文化なのか?海外では「便利さ」や「手軽さ」を求められていて、日本では「信頼性」を求められているからだそうです。確かに、重要書類では実印を押して印鑑証明を添付することで、確実な契約になりますね。
また、印鑑を廃止するとなると、実際問題として膨大な法律の改正が必要になるそうです。

ところが、一部銀行などでは、印鑑廃止の動きもあるそうです。
静脈で本人確認を行うなど様々な方法が適用されているそうです。今後、さらに開発が進むと、印鑑が不要になる時代が訪れるかもしれませんね。

6.血判状は現代でも効力がある?

昔の人が自分の決意や誓いの強さの示す表現方法として指の一部を刃物で切り、自分の血液で捺印した「血判状」。
昔、特に戦国時代では盛んに使われていた血判状ですが、果たして現代でも法的な効力はあるのでしょうか?

結論から言いますと、今でも効力はあるそうです。
拇印と同様に自分の意思を証明する方法として有効であり、いざとなれば血液からDNA鑑定をすることで本人であることを明確にすることもできます。

とは言え、紙でちょこっと指を切ってしまうだけでも痛いので、ナイフで自分の指を傷つけてその血液で捺印するなんてちょっと尻込みしてしまいそうですよね。